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Forest Instructor Association of Japan

北海道から広がる「木育」の輪1〜北海道の木育の誕生〜 

                                     執筆:工藤森生氏(北海道8-0526)

はじめに

 
 北海道で生まれた「木育」という取組の輪が、全国的に広まりつつあります。
 本州でも「木育フェスタ」や「木育体験」などのイベントが行われていることを普通に見聞きするようになってきました。さらには、韓国の大学から木育に関する講演依頼が北海道庁に届いたり、札幌市内の木育イベントでは、外国観光客から「どこに問い合わせをすれば勉強できるのか」と、質問されたり、外国の子どもが体験コーナーから離れなかったりと、外国人にも興味をそそるようです。
 きっと木育は、子どもから大人まで、性別や人種など関係なく、人として受け入れやすい言葉であり取組なのでしょう。
 私は、北海道庁の職員としてこの言葉の誕生から関わり、13年目を迎えました。
 ここでは、北海道が目指す「森づくり」と「木づかい」の両方への取組、つまりは森林資源循環利用ということまで見据えた取組である「木育」について、北海道で生まれた背景、現状、課題と展開方向などを木育推進担当者の立場からご紹介します。
 

「木育」はこうして誕生した

 
 事の始まりは、平成16年7月「女性知事リレーフォーラムinほっかいどう」が、札幌市で開催され、その中で高橋北海道知事が「木育」という言葉を初めて使用したことからです。
【参考1】女性知事リレーフォーラム
2004年7月23日札幌市で、女性知事が一堂に会し、生活者や女性の視点から共通の政策課題等をテーマに意見交換を行い、相互の連携及び交流の促進を図ることを目的に開催。
 ・出席者(4知事)
千葉県知事:堂本 暁子
大阪府知事:太田 房江
熊本県知事:潮谷 義子
北海道知事:高橋 はるみ  
 

 
 この時、北海道の少子化は全国を上回る速さで進行しており、少子化対策は、本道にとって重要かつ喫緊な課題となっていました。このことから、北海道独自の少子化対策を道民と一体となって推進するため、少子化対策の目的、基本理念、基本的施策等を明確にした都道府県レベルでは全国初となる「北海道子どもの未来づくりのための少子化対策推進条例」(通称:北海道子ども未来づくり条例)を制定した年でありました。
このためでしょうか、同時期に道が実施した「協働型施策検討システム推進事業」に平成16年度の検討テーマとして「子どもの頃から木材を使うことで森林と環境を考える心を育てる『木育』の推進」が選定されました。
 この事業は、検討テーマを公募し、道民、市町村職員、道職員によって組織されたプロジェクトチームで施策検討から施策づくりまでを行うものです。
 平成17年3月に報告書がまとめられ、公表することにより「木育」が正式な言葉として公的場に登場することになりました。
 実は、道の担当部局が検討テーマとして取り上げた背景としては、林業・木材産業が低迷している中、道産木材の利用の促進を図りたいということがありました。ちょうどそのころ、道では「産消協働」という地域にある資源や人材を地域で消費・活用することでその地域の活性化につなげる道民運動を進めており、道産木材の利用についても「地材地消」ということで普及啓発を行っていました。しかしながら、なかなか道民の方々に浸透しないことから、より簡単に分かりやすく森林や木材の価値を伝える方法はないか思案していたころでした。


北海道が進める「木育」とは?

 
 前段にありましたとおり、平成17年3月に報告書がまとめられ、公表されたわけですが、その内容を検討したのが「木育推進プロジェクトチーム」です。
 【参考2】木育推進プロジェクトチーム
○メンバー
 リーダー:(財)北海道環境財団 理事長 故・辻井達一
 実 務 家:札幌大谷短期大学保育科 助教授・清水郁太郎、学校法人北邦学園 理事長・瀬川五水、NPO法人北海道子育て支援ワーカーズ 代表理事・長谷川敦子、NPO法人ねおす 専務理事・宮本秀樹
 公募道民:KEM工房 主宰・煙山泰子、(株)北樹 代表取締役 管 義則、コクヨ北海道販売(株)開発本部 副部長・山本憲哉、木の芽書房 編集プロデューサー・箱崎岩男
 公募市町村職員2名、公募道職員1名、関係部局職員3名                   以上15名
 
 様々な方々が集い、協働しながら、「木育」とは何かを様々な角度から検討したのです。その結果が次のとおりです。
(1)「木育」とは?
 「木育」とは、子どもをはじめとするすべての人が木を身近に使っていくことを通じて、人と木や森とのかかわりを主体的に考えられる豊かな心を育むことです。端的に言うと「木とふれあい、木に学び、木と生きる」そういう人づくりです。
(2)「木育」のキーワード
 「木育」のキーワードは、”つながり“でです。身近な木や木のモノから「人と森のつながり」を考えること。家庭や学校、地域の中から「木と森のつながり」を見つけ新しいつながりをつくること。そして、みんなが取り組んでみたくなる木育の活動を通じて「人と人のつながり」を生み出すことです。人、木、森など様々なものがつながることでいろんなものが育まれていくことが木育の基本的な考え方です。

(3)「木育」のめざすもの
 北海道が考える「木育」のめざすものは、次の四つです。
@五感とひびきあう感性  木と五感でふれあい、手でつくり、考える経験をとおして人や自然に対する「思いやり」と「やさしさ」を育むこと。
A共感できる心  身近な人と木で遊び、木に学び、モノをつくる体験を通じて楽しさや喜びを共感し、地域や社会、産業への関心をつなげること。
B地域の個性を生かした木の文化 地域の森や木の良さを見直し、木が身近にある北海道ならではの暮らしや文化を提案すること。
 C人と自然が共存できる社会 循環利用が可能な資源である木の可能性や、森や木に携わる仕事の素晴らしさを伝え、持続可能な未来に向けた社会をめざすこと。 

 このように「木育」は、定義され、北海道の新たな取組としてスタートしたのです。
 しかし、皆さん!行政が関わったわりには、何か明確な目標がなく、物足りなく感じませんか?これはプロジェクトチームのこだわりでもあるのです。「緩ーい木育、それでいいじゃない」私もそう思います。
 次回は、北海道における木育の取組が、どのように進められたのか紹介します。