◆ホタルから自然と人間の共存について考える (2008年7月)
6月下旬から7月は全国各地でホタルが舞う季節です。 ゲンジボタルは沢、ヘイケボタルは田んぼなどによく見られ、大きさ、飛び方、光り方など、それぞれに個性があります(参考文献1、参考文献2)。 ホタルが飛ぶ時に放つ光は何時も人の心を和ませてくれますね。 「蛍の光」、「ほたるこい」などの歌にもなり、ホタルは昔から私達にとって身近な存在だったと思われます。
そこで、蛍と日本人の関係を、今の視点と昔からの長期の視点で2つの事例を通して考えてみたいと思います。
■各地で進むホタルを呼び戻す活動
近年、ホタルを呼び戻す取組みが各地で盛んです。 ゲンジボタルを対象とした河川の改修や餌となるカワニナの放流などが行われています。 河川の改修は、コンクリートの護岸を自然の環境に戻す興味深い取組みです。
■顕在化してきたカワニナの問題
ところが、餌となるカワニナの放流に関して問題が分かってきました。 カワニナと似ている外来種コモチカワツボの繁殖による生態系への影響です。 カワニナと間違えて放流している可能性も指摘されています(参考文献3)。 国産種を放流する場合でも各地に生息していたカワニナの固有種が減るという問題が指摘されています(参考文献4)。 この事例は、餌の放流という、食物連鎖の仕組みの一部に人間が関与することの難しさ示しています。 私達が自然界の食物連鎖に関わるときは、その効果や影響を長期に渡りモニタし、広い範囲で異変が無いことをチェックすることが重要であるといえます。
■私達の生活に深く関わる昔の関係
次に長期の視点からホタルと人間の関係を考えてみます。 ホタルは人里離れた清流に住んでいると考えてしまいますが、昔はかなり身近な存在だったようです。
そもそも、ヘイケボタルは田んぼが適した生息場所の一つですし、ゲンジボタルの場合も、カワニナはきれいな水よりも野菜屑などの有機物が多少は混ざった水を好みます(参考文献4)。 したがって、昔は生活廃水が流れ込む小川や人が手を加えた田んぼなどを通じて、ホタルと日本人は身近な場所で共存していたと考えることができます。
■共存できなくなった訳
ホタルが身近に見られなくなってしまった主な要因には水質の悪化、護岸のコンクリート化、などとともに、町の明かりが必要以上に明るくなったことも考えられます。 今でこそ温暖化の要因として「明るすぎる日本」が問題視されていますが、日没後の限られた時間に光ることでオスとメスがお互いの存在をアピールし子孫を残すホタルにとって、人工的な夜の明かりは、子孫を残す機会を妨げてしまいます。 街灯などは安全面から必要ですが、自然との共存という点からは、明るさや点灯する時間帯などに配慮が必要です。 この事例は、水質悪化、コンクリート化、明かりの増加、など日々の生活に関係する様々な変化が、自然と人間の結びつきに影響を与えていることを示しています。
■まとめ
今、進められているホタルを呼び戻す取組みは、多くの人が自然に関心を持つ機会を与えてくるとうい点からも大変良いことです。 是非、これらの活動を通じて、今回示した様な背後にある様々な問題に気が付き、色々な立場の人たちがお互いの知恵を出し合える環境が増えていくことを望みます。
私達森林インストラクターもその手伝いができれば良いと思います。
■参考文献
参考文献1:農林水産省HP「ゲンジボタル」
http://www.maff.go.jp/nouson/mizu_midori/frame/617f.html
参考文献2:農林水産省HP「ヘイケボタル」
http://www.maff.go.jp/nouson/mizu_midori/frame/616f.html
参考文献3:国土交通省河川環境データベース「【国外外来種の確認状況(フロリダマミズヨコエビ、コモチカワツボ)】P2−35」
http://www3.river.go.jp/download/pdf/gaiyo/h18/05teiseikekka/05teisei_seitaikei.pdf
参考文献4:農林水産省HP「カワニナ」
http://www.maff.go.jp/nouson/mizu_midori/frame/206f.html
以上
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