朴葉寿司(ほおばずし) 編集部(岐阜県中津川市から)
5月の木々はぐんぐん新しい葉を広げ、森は秋とは違った甘い香りを漂わせています。ホオノキの葉はとても大きく、何かを包むのにはとても便利なので、昔の人は今よりももっと暮らしに役立ててきたに違いありません。ホオノキの葉が開いてくると、この地方の女性たちは朴葉寿司づくりを楽しみにし始めます。
◆朴葉寿司のつくり方
朴の葉は香りがよく殺菌作用もあります。出てから1カ月ぐらいたったものが特に香りが強いので、朴葉寿司に最適です。
朴の葉は洗ってふきんで水気をふき取り、葉柄と葉の下部をはさみで切り落とし、使いやすくします。葉をかわかすうちに、ちらし寿司を作ります。
ちらし寿司は、具をご飯(寿司飯)に混ぜ込む方法と、ご飯の上に具を彩りよく並べる方法があります。写真の具は、右からシーチキン、きゃらぶき、ます、紅しょうが、あさりのしぐれ。このほか東濃地方では、たけのこを必ずといっていいほど入れます。錦糸玉子(薄焼き卵の千切り)を入れると彩りがよくなります。へぼ(蜂の子)の佃煮を入れることもあります。
ご飯が熱いうちに包めば香りがよく移ります。でも葉の色は黒ずんでしまいます。
包み方は、
・ご飯をはさんだ葉を2つ折りにして、切った葉柄をようじがわりにして葉の端を留める
・葉の両端も折り曲げてご飯をしっかり包み込むようにし、ひもで十字に結ぶ
など。ひもは竹の皮を裂いたものなら最高ですが、面倒な場合は輪ゴムでがまん。
たくさん作っておひつや寿司桶に並べ入れ、好みで軽く重石をして30分〜半日ほどおいてできあがり。あまりしっかり押さないのが美濃流です。
◆朴の葉のとり方・朴の木あれこれ
ホオノキは山里の周辺の低山によく生えています。葉が大きく、7枚ぐらいの葉が風車のように輪になって付いています(輪生といいます)。よく似た葉にトチノキがありますが、トチノキの葉には葉柄がありません。正確にはトチノキの葉はそのまとまった数枚で実は1枚の葉です。朴の葉を採るときには、輪生している元からまとめて採るのがコツ。はさみがなくても簡単に折れますが、山里の畑の縁にあるものはそこのお宅で育てているものなので遠慮しましょう。山の中のものは高いところについているのではしごが必要です。花が咲く頃のものが朴葉寿司用の旬です。時期を過ぎたものでも作れますが、葉が硬く香りもありません。
美濃地方や木曽地方では、朴の葉を利用するために、屋敷や畑の隅によく植えています。葉を採りやすいように木をせん定し、樹高が高くならないようにしています。また、朴葉寿司のシーズンには、朴の葉をスーパーで売っています。中津川市では、ホオノキの葉のことを「ほおばの葉っぱ」と呼んで親しんでいます。高いところの朴の葉を採るためのはさみを持っている家も多くあります。これは、長い柄の先にはさみがついていて、その操作は手元でできるしくみ。
朴葉寿司そのものも、スーパーやコンビニ、産直野菜の店などで売られます。もちろん郷土料理のお店で食べることができます。イベントのお弁当にされることも多いようです。
◆朴の葉の利用
朴葉餅(朴葉巻き)は、輪生した朴の葉をそのまま生かしてあん入り餅を包んだもので、お餅が葉柄で7個ぐらいつながっているのが特徴。
また、木曽地方には朴の葉にお米を包んで蒸す「朴葉飯」があるそうです。
東北地方ではおにぎりを包むとか。
西濃地方では、報恩講という東本願寺系の行事のとき、ごちそうを持ち帰るのに朴の葉に包むことが『岐阜県の食事』(農文協)に記録されています。
飛騨地方には、朴の落ち葉に味噌を乗せていろりの火であぶりご飯のおかずにする「朴葉みそ」があります。
子どもたちは輪生した朴の葉を風車にして遊びます。
◆そのほかの葉っぱ寿司
先月紹介した柿の葉寿司や笹寿司などでいろんな香りにチャレンジしてみては? ⇒先月分
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