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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2021年11月 キノコの生息域変化と日々の観察の大切さ

従来見られなかった南方系の毒キノコが発見される事例が千葉県や長野県でニュースになっています(参考文献1、2)。そこで、今月はこの話題をきっかけにして日々の観察の大切さについて考えてみたいと思います。

■温暖化による毒キノコの生息域の変化
千葉県や長野県では従来生息していなかった南方系の毒キノコ「オオシロカラカサタケ」が確認されるようになり注意喚起が行われています(参考文献1、2)。生息域が日本列島を北上する理由は地球温暖化の影響とみられています。

■地球温暖化が及ぼす様々な影響
地球温暖化の影響で生息域が変わる現象は陸上に限定しても様々な事例がみられます。身近な例としてシマカがあげられます。10数年前まで蚊がいなかった涼しい地域でも、今は蚊取り線香が必要という話を耳にします。貴重な高山植物もシカの生息域の拡大にともなう食害により種を減らしています。気が付きやすい例としてマツ枯れの拡大も指摘されています。温暖化がこのまま進むと2050年にはマツ枯れの危険性が2割から3割増し、マツの後にはササやシダで覆われるという予測もあります(参考文献3)。同報告ではブナ林への影響も分析しており、2050年にはブナ林は3割から4割ほど失われ、ブナ林が持つ水源涵養や生物多様性の損失被害は年間1千億円を超えると試算しています。

■日々の何気ない観察の継続とその情報共有の大切さ
少し視点を変えますが、温暖化影響など生態系の変化を捉えてその将来を予測するには、地道な調査の継続とその情報の共有が大切です。青森県の浅所(あさどころ)小学校では1956年から55年間、ハクチョウの飛来の様子を観察し記録しており、その内容が今年の2月に科学誌「データ・イン・ブリーフ」に掲載されたそうです(参考文献4、5)。掲載にあたっては、その記録が多くの人の役に立つと絶賛され、手書きの観察日記のデータ化にもたくさんの協力があったそうです。もしかすると、身近な自然の観察記録を整理していくと、思わぬところで価値がでてくるのかもしれませんね。

■まとめ
私たち森林インストラクターは全国各地で地道な森に関わる活動をしています。少しずつでも全国の情報を共有しいくという地道な活動も進めていきたいと思います。

参考文献1:千葉日報「“南方系”県内で確認増 毒キノコのオオシロカラカサタケ 温暖化の影響?人里に(2021/10/11)」(2021年10月17日閲覧)
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/60736

参考文献2:信濃毎日新聞「毒キノコ「新顔」に注意 温暖化影響? 熱帯、亜熱帯で見られる種が長野県内で確認(2021/10/3)」(2021年10月17日閲覧)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021100300076

参考文献3:温暖化影響総合予測プロジェクトチーム「地球温暖化「日本への影響」-長期的な気候安定化レベルと影響リスク評価-(平成21 年5 月)」(2021年10月17日閲覧)
https://www.nies.go.jp/s4_impact/pdf/20090612.pdf

参考文献4:朝日新聞「小学生のハクチョウ観察日記、科学誌に 研究者も絶賛(2021/7/8)」(2021年10月17日閲覧)
https://www.asahi.com/articles/ASP7H4K6PP77PLBJ00T.html

参考文献5:八戸工業大学「55年間にわたる浅所小学校の児童たちの白鳥観察記録、論文として公表するお手伝いをしました!(9月3日:報道情報追加)」 (2021年10月17日閲覧)
https://www.life.hi-tech.ac.jp/?p=2884



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