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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2016年5月 歴史的構造物の地震対策について考える

熊本の地震で被災された方にはお悔やみ申し上げます。今月は今回の地震で瓦が落下した熊本城について瓦の固定方法という点に着眼して少し考察してみたいと思います。

■多くの被害がでた熊本城
熊本城では今回の震災で石垣や重要文化財にも被害が発生し、煙を上げながら屋根瓦が多数落下する映像はテレビで何回も放映されました。天守閣は1960年に鉄筋コンクリートで再建されたものですが、今後、詳細な被害は明らかになってくると思います。

■瓦の固定方法
現在の一般家屋の屋根瓦は針金などで固定し落下を防止しています。一方、お城など文化財で昔のつくりを忠実に再現する場合、針金などは使わず漆喰で固定するなど手間をかけて瓦を葺きます(参考文献1)。瓦に文様をきざみ、土を葺いた「桟木(さんぎ)」に載せて叩きしめる方法は数百年持つそうです(参考文献2)。確かに土や漆喰は針金に見られる錆劣化などはなく、結果的に長く機能を維持できるよく考えられたつくりであると思います。ちなみに、熊本城の映像で瓦が落下するときに煙が立っているということは、漆喰など昔の方法で瓦を固定していたのだと思います。

■瓦の固定方法の長所短所
熊本城の瓦の落下に関しては、瓦が落下することで屋根が軽くなり耐震上も良いという指摘があります。確かに屋根が軽くなると耐震上は良いと思いますが、落下による人的被害の可能性が高まります。ここには、安全面からのトレードオフの問題が発生してきます。熊本城の場合は観光客が多く訪れている時間帯でなく良かったと思います。

■トレードオフを知り議論することの大切さ
今回は瓦の固定方法の今昔を取り上げてそれぞれの長所と短所をすこし考察してみました。今回取り上げた瓦だけでなく、歴史的建造物について様々な場面で、安全面から新旧どちらの工法を使うかという問題は発生し得ますし、どちらが正しいという結論を出すことはなかなか難しいと思います。今後は正しい情報に基づいて長所と短所を皆が理解して合意形成していくプロセスが重要になのではないでしょうか。今回の熊本城の瓦の落下は、私たちにその気づきを与えてくれたのかもしれません。

参考文献1:熊本市, 「本丸御殿フォトギャラリー」, 熊本城公式ホームページ(2016年4月23日参照)
http://www.manyou-kumamoto.jp/contents.cfm?id=650

参考文献2:松田敏行, 「木と語る匠の知恵」, 祥伝社黄金文庫, 104項(なぜ『瓦葺き』は三百年以上も保つのか), 2000年




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