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Forest Instructor Association of Japan

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2017年6月 外来生物について考える

今月は国宝の姫路城における外来生物に関するニュース記事から外来生物について考えてみました。

■姫路城における外来生物の影響
世界文化遺産の姫路城では、外来植物であるシュロやニワウルシなどが増え、根が石垣の隙間に侵食するといった文化財への影響が懸念されているそうです。このほか、セイヨウタンポポやヌートリアも確認されています。そもそも築城当初は、敵の動きを把握するため、城内に樹木がほとんどない状態であり、文化財という視点でのあるべき植生を検討すべきという問題提起がなされています(参考文献1、2)。

■外来種対策
ご存知の通り日本では「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」により、生態系などに問題を引き起こす外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いを規制し、特定外来生物の防除等の取り組みがなされています。平成28年10月1日からは特定外来生物として飼養等の規制が開始されました(参考文献3)。

■見えてくる人間の都合
そもそも外来生物はどのような目的で日本に持ち込まれたのか、国立環境研究所の侵入生物データベース(参考文献4)で調べてみました。姫路城で確認されているシュロは庭木や街路樹に加え、繊維や葉は縄や細工物に利用するために、ニワウルシは庭木や街路樹として、セイヨウタンポポは食用や飼料として、それぞれ導入されたそうです。また、ヌートリアは第二次大戦時中から戦後にかけて毛皮用に飼育されたとのことです。その他では、鑑賞目的で導入されたアライグマ、庭木、緑化、防砂林などの目的で導入されたニセアカシア、釣り対象や食用として導入されたブラックバス、など様々ですが、どれも人間側の都合で導入されたことをきちんと理解しておく必要がありますね。

■問題を受け止めることの大切さ
外来生物の影響には、在来生物の捕食や競合、近縁交配による交雑、寄生や寄生虫を持ち込み、食害等による環境改変、などがあります(参考文献5)。まずは、人間の勝手な行動がもたらしたこれらの影響をきちんと受け止めることが、今の私たちに求められているのではないでしょうか?
ちなみに、侵入生物データベースによるとコイは世界の侵略的外来種ワースト100に入っていますし、釣りで人気のアユやイワナなども外来生物として登録されています。まずは、外来生物という実態を理解したうえで、影響の大小をきちんと把握していくことが重要ではないかと思います。

参考文献1:産経新聞「姫路城、文化財侵食の危機…外来植物が増殖、難攻不落の名城脅かす 市が本格伐採に着手(2017年5月10日)」(2017年5月20日閲覧)
http://www.sankei.com/west/news/170510/wst1705100048-n1.html

参考文献2:神戸新聞NEXT「国宝姫路城に“天敵”ヌートリア 石垣崩落の恐れも(2016年7月21日)」(2017年5月20日閲覧)
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201607/0009306527.shtml

参考文献3:環境省ホームページ「日本の外来種対策」(2017年5月20日閲覧)
https://www.env.go.jp/nature/intro/

参考文献4:国立環境研究所「侵入生物データベース」(2017年5月20日閲覧)
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/

参考文献5:国立環境研究所「侵入生物データベース その影響は?」(2017年5月21日閲覧)
http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/basics/impact.html


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