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Forest Instructor Association of Japan

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2020年5月 人の接触が制限される中で木との触れ合いを考える

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行で人とハグできない状況の中、アイスランドの森林管理局が「人とハグできないなら木とハグしよう」と呼びかけているとのこと。そこで、今月は木との触れ合いについて少し考えてみたいと思います。

■アイスランドの国有林の取り組み
アイスランドの東部にある国有林では森林警備隊員が雪に覆われた道を掃除して「人々が木にハグできる状態」にしているそうです。1日当たり5分間木をハグするだけで十分な効果が得られ、木を抱きしめている間は目を閉じたり、頬を木の幹に寄りかからせて木の温かさと木から自分に流れ込むものの存在を感じ取ったりしながら自然からのエネルギーを享受することを推奨しています。森の中でも社会的距離を保てるよう、森の中に2m間隔の印を付ける配慮もされています。木はたくさんあり、どんなサイズでも効果は得られるとしています(参考文献1)。

■木と触れ合うことによる人への効果
木と人が触れあうことについて教育現場では木育の活動が全国で見られます。木育発祥の地である北海道では、子供をはじめすべての人たちに木と触れることによるリラックスしたりする効果を知ってもらいながら木材の利用と健全な森づくりに向けた仕組みを構築しています(参考文献2※)。また加工された建築用木材に対し、林業白書では心理面の効果を特徴の一つにあげ、木材の香りや木材への接触がストレスを抑制する効果を指摘しています(参考文献3)。木材や森林浴などの健康への効果は医学的または科学的立場からの様々な検証がなされています(参考文献4、5)。
(※)インタビューを受けている工藤さんは私たち森林インストラクター仲間です。

■今だからこそ身近な木に注目しては
日本の森林面積は国土の68%であり森林は身近な存在です。首都圏でも郊外には里山がありますし、都市部にも緑化された公園や街路樹なども見られます。5月上旬の時点では不要不急の外出が厳しく制限されている地域もありますが、今回のCOVID-19との戦いは長期化が想定されます。自然散策が許されるような場合には社会的距離を保つなど必要な対策を実行しつつ、身近な自然の恵みを享受することも考えてみてはいかがでしょう。木が風でなびく音なども心地よいですね。

■まとめ
今月はCOVID-19拡大に伴い人との接触が制限される中でアイスランドの森林での取り組みを紹介しました。少し残念なことは郊外の里山は人との接点が減ってしまい山の中を歩けるような状況にないケースが多々あると思われます。山の所有者の理解も必要です。日ごろから、地域の近くにある里山に関心を示しておくことの大切さを改めて感じました。今からでも遅くはないかもしれません。アイスランドのように森林を社会的距離を保ちながら歩いたり樹木を触ったりできるような環境が整備されるとよいと思います。

参考文献1:GIGAZINE「新型コロナウイルスの流行で人とハグできない状況の中で「木を抱きしめること」を森林管理局が推奨(2020年4月15日)」(2018年4月18日閲覧)
https://gigazine.net/news/20200415-forest-service-recommends-hugging-trees/

参考文献2:北海学園大学「下村ゼミ」道政広報番組「『北海道×HGU.ch(vol.2)』 木育~木が育てる北海道の未来~(2014年6月18日」」 (2020年4月20日閲覧)
https://www.youtube.com/watch?v=nIE-fXH8exc

参考文献3:林野庁「平成30年度林業白書 第5章」(2020年4月18日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/30hakusyo/attach/pdf/zenbun-5.pdf

参考文献4:森林総合研究所運営費交付金プロジェクト「『人間の快適性に及ぼす木材の触覚、視覚及び嗅覚刺激の効果の解明』成果報告会 要旨集(2018年2月27日)」 (2020年4月18日閲覧)
https://www.ffpri.affrc.go.jp/news/2018/20180402kinoyosa/documents/20180227ffpri_kinoyosa.pdf

参考文献5:森田えみ「森林浴の効果について」日緑工誌,J. Jpn. Soc, Reveget, Tech., 35(2), 291-292 (2009) (2020年4月19日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsrt/35/2/35_2_291/_pdf



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