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Forest Instructor Association of Japan

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2022年1月 森林への太陽光発電設備の設置について考える

地球温暖化の抑制が強く求められるなか、再生可能エネルギーの一つである太陽光発電設備の森林への設置に関して、地元住民の理解が得られずに問題化するケースが増えています。そこで、今月は森林の土地利用の観点から太陽光発電設備の設置について考えてみたいと思います。

■各地で問題化している森林への太陽光発電設備の設置
静岡新聞は、福島県の大規模太陽光発電設備建設計画に対する地元住民の懸念が同県にも通じる課題であると指摘しています(参考文献1)。このような問題は全国にみられ、土砂災害、景観影響、濁水、自然環境破壊、説明の欠如などの指摘が多く、反対運動や条例による許認可審査の厳格化などの事例もみられます(参考文献2)。最近では地元住民の反対に加え電力の買取り価格の下落から計画を断念した事例も出てきました(参考文献3)。

■太陽光発電設備の土地利用影響
国立環境研究所が0.5MW以上の太陽光発電設備を対象に土地利用の実態を調べたところ、日本では植林地、草原、農地などの里山の自然に該当する場所への設置が多く、鳥獣保護区や国立公園などへの設置も確認され、自然保護区での規制や都市への誘導の必要性を示しています(参考文献4)。また、ライフサイクルアセスメント手法を用いた分析では、石炭火力を太陽光発電に置き換えることによる温暖化影響抑制効果と森林利用による一次生産性と生物多様性の影響は同レベルであるという結果も示されています(参考文献5)。これらの知見から、太陽光発電設備の設置にあたっては、土地利用影響の多様な視点での評価と、状況に応じて適切な場所への設置を誘導するような仕組みの構築が求められていると言えます。

■様々な学術的視点での分析が大切
太陽光発電設備の設置場所の分析は、複数の学術的視点から総合的に行うことが望まれます。上述したライフサイクルアセスメント手法は方法論に確率的要素が入っていますし、手法毎に評価範囲が異なるため、複数の手法の比較や不確実性の分析など専門的なチェックが望まれます。加えて発電効率や日照条件など評価シナリオの影響も理解しておく必要があります。一方、土砂災害、景観、濁水などへの対応では法的なアプローチが有効かもしれません。更に、森は信仰の対象になるなど、その価値は多様で社会科学や文化・哲学的な知見も求められます。このように、環境、法律、社会科学、文化、哲学などの複数の専門分野が関係しており、それらの専門家が連携し、着地点を見いだせる動きが取れると良いですね。

■まとめ
森林の価値は多様である一方、化石燃料依存から抜け出すには太陽光発電などへの転換も必要です。その折り合いをどのようにしていくか、今はまだ試行錯誤の時期なのかもしれません。様々な学術分野の知見を活かして複雑な問題を解く鍵を見いだしていくことが求められているのかもしれません。

参考文献1:静岡新聞「問われる「林地開発許可」熱海・土石流、繰り返すな 宮城のメガソーラー計画「ずさん」(2021/12/14)」(2021年12月18日閲覧)
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/999422.html

参考文献2:林野庁「太陽光発電をめぐる情勢(令和元年6月)」(2021年12月18日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/tisan/tisan/attach/pdf/con4-13.pdf

参考文献3:一般社団法人環境金融研究機構「長野・霧ケ峰高原の旧牧場跡の森林でのメガソーラー計画、事業主のLooopが計画断念。地元住民の懸念払しょくできず。事業採算性低下。森林管理の課題は残る(各紙)(2020年6月20日)」(2021年12月18日閲覧)
https://rief-jp.org/ct10/103774

参考文献4:国立環境研究所「太陽光発電施設による土地改変-8,725施設の範囲を地図化、設置場所の特徴を明らかに-(2021年3月29日)」(2021年12月18日閲覧)
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20210329/20210329.html

参考文献5:野田英樹, 奥野喜裕, 伊坪徳宏「森林植生の違いを考慮した太陽光発電システムの土地利用影響評価」日本LCA学会誌11巻2号、pp.172-188、(2015)(2021年12月19日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lca/11/2/11_172/_article/-char/ja/




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