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Forest Instructor Association of Japan

Newsを考察

2022年11月 継続するナラ枯れの再拡大

今月はナラ枯れに関するニュース記事が複数ありましたので、昨年1月に続きナラ枯れについて考えてみたいと思います。

■ナラ枯れの再拡大とその継続
ナラ枯れは体長5ミリほどの甲虫「カシノナガキクイムシ」(カシナガ)が媒介するナラ菌が引き起こします。昨年1月には再拡大の理由として温暖化によるカシナガの生息域の拡大や極端な豪雨によるナラへのダメージを指摘しました。
ナラ枯れの再拡大は継続しています。今月のニュース記事だけでも京都(丹後)、千葉(鴨川)に加え、皇居での被害も記載されています(参考文献1~3)。

■複数の要因と生活圏への拡大
丹後のナラ枯れの原因は90年代の被害を逃れた木が20年たって被害を受けやすい樹齢に成長したこと、ナラ枯れの生活圏への拡大による人的被害への危険が高まっていること、が指摘されています(参考文献1)。ナラ枯れの再拡大の継続には温暖化や異常気象に加え、様々な要因が重なっていると考えられます。

■多様な対策を
昨年1月の本コーナーでは予防策としてナラ材の利用による若返り、新陳代謝の推進による生態系への効果などに触れました。鴨川市では枯れた場所にヤマザクラを植える森林整備が始まっています(参考文献2)。予防策に加え、事後の森林整備も大切です。植林の場合、地域に根付いて活動が継続する仕組みや生態系への配慮として遺伝子のかく乱を防ぐ樹種の選定なども重要です。遺伝子かく乱防止にはガイドライン(参考文献4)の活用も有効です。このようにナラ枯れへの対応では広い視野からの検討が必要であり、様々な視点からの検討過程の情報の共有が進むと良いですね。

■まとめ
燃料費が高騰する中、ドイツでは燃料源として薪が注目されています(参考文献5)。国内でもナラの価格は良質な薪やシイタケの榾木など様々な利用価値から上昇しています。ナラへの関心がさらに高まり、里山の継続的な保全に繋がることを望みます。

参考文献1:京都新聞「山を赤く染める「ナラ枯れ」、京都・丹後で再拡大 「人命にも危険が」(2022/10/13)」(2022年10月15日閲覧)
https://news.yahoo.co.jp/articles/1ab2259dad06d930ad4de14a4a228e5b75358f95

参考文献2:毎日新聞「樹木の伝染病「ナラ枯れ」ついに皇居でも 今、再拡大する理由とは(有料記事)(2022/10/15)」(2022年10月15日閲覧)
https://mainichi.jp/articles/20221014/k00/00m/040/105000c

参考文献3:NHK NEWS WEB「毎年1000本のヤマザクラ植樹 ナラ枯れを防ぐ 千葉 鴨川(2022/10/9)」(2022年10月15日閲覧)
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20221009/1000085677.html

参考文献4:森林総合研究所「広葉樹の種苗の移動に関する遺伝的ガイドライン」(2022年10月16日閲覧)
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/2nd-chukiseika20.pdf

参考文献5:毎日新聞「独、苦肉のまきストーブ エネルギー高騰で自衛 政府「暖房19度」、インフレ対策9兆円(有料記事)(2022/9/9)」(2022年10月16日閲覧)
https://www.rinya.maff.go.jp/kyusyu/invitation/q_a/rkuma10a.html



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